AMOREリストランテ アモーレ2003年

AMORE

2003年暮れに東京六本木にオープンしたイタリアンレストラン「リストランテ アモーレ」の飲食店舗内装の記録です。 鉄人料理人澤口知之氏が経営するのこのイタリア料理のお店の特色はいままで常識的と思われているイタリアンレストランと大きく一線を画す点があります。それは、

  • オープンキッチンである
  • メニューのないレストランである

という点。この二点を前面に押し出し、「本当のイタリアン」を「本物の素材」で提供するためのサービスを行うための「空間のサービス」をめざしました。
具体的には、

  • 店内を分断する11mのカウンターで厨房とフロアーが仕切られている。
  • 角度のついた矩形が2つ離れてからみあう平面構成である。

といった、建築計画の構成そのものはきわめてシンプルな作り方をしています。
入り口は楢の無垢材を組み合わせた格子戸です。店内の様子が少し見える、・・・というより店内の空気が外に漂います。飲食店の店舗設計の一つのルールとして「内部の気配の伺えるファサード」を入り口の建具に求めました。インテリア及び中の雰囲気がうっすらとこの格子戸を通じて漂ってきます。

AMORE
AMORE

イタリア料理がその本来持つ「素材の良さ」と「単純な調理方法」の組み合わせから得られる絶妙な「食文化」を演出する手法を、ここでは建築的に単純な構成と単純な素材の組み合わせをもって対峙すべく試みました。普通の空間が食文化を楽しめる空間に昇華する時、衣食住の食と住が必要条件としての範疇を越え、十分条件に近づけば・・・と考えました。

AMORE
AMORE

この店の大きな特徴のひとつである長さ11mのカウンターを入り口の反対側から振り返ったところです。入り口側の方はそのままバーカウンターになります。バーカウンターの正面に腰掛けるとそこにはバックバーに凝縮されたリキュールが気持ちを誘います。

AMORE
AMORE
AMORE
AMORE

可動間仕切りで軽く仕切られたスペースはこの様に「少し軽く仕切って」の感覚です。 ともに澤口知之氏のコレクションである古い家具と近世の版画、その家具に置かれるブルネッロのワインが心地よいイタリアンレストランの空間を演出します。

AMORE

その可動間仕切りの内側から振り返った様子。インテリアデザインの一つの方向性として「立つ位置による異なる情景」を考えます。異なる矩型を平面的に角度をつけて絡ませることにより常に視界は変化します。イタリアの小都市のもつ「路地」の感覚をこの店舗に反映できれば、と考えました。

AMORE

入り口を入るといきなりフロアです。正面の絵は版画を中心とした澤口氏のコレクション。絵を照らすスポットライトが間接光としてテーブルに落ちます。 レストランとしての機能を持つこの店舗のインテリアは平面的に矩形を角度をもたせて配置しているため逆パースぺクティーブとなり現れます。「中の気配」が入り口を開けたとたんに一息にに展開します。

AMORE

厨房側から見た客席(フロア)の様子です。画面奥の格子戸は可動間仕切りとなり、人数に応じて仕切方法を変えられます。入り口と同じ楢の無垢材で構成されています。イタリア料理のもつ端正で厳格でくつろいだ雰囲気、その様な相反する事象をインテリアデザインとしての立場で表現出来れば、と考えました。

AMORE

トイレ洗面台です。P.スタルクの洗面台の両側は「サボテンの骨」と「桑原泰男氏の彫刻」。 料理の盛りつけはどことなくこの「サボテンの骨」を彷彿させます。この無骨なまでのディスプレイとスタルクの衛生陶器の組み合わせが絶妙。

AMORE