NAK-C洗足の二世帯住宅1992年
東京都心から比較的近い住居エリアにこの2世帯住宅は計画されました。車の通りが少ない閑静な場所で、春になるとそのいたるところで桜が咲き、秋には落葉が自然な形で道路を覆う、そんな散策の道にでもなるような四季の豊かなエリア、そこにこの住宅は計画されました。一方で2世帯住宅としては決して広い敷地とは言えず、同時に法42条2項道路で地所のかなりの部分が道路として提供せざるをえず、そうはいい地価の高いこの地を選んだという建築主の思い入れもあり、なんとか基準法ぎりぎりの範囲内で最大限の有効な利用が出来ないかを模索し続けました。また風水にこだわりを見せる建築主の意のもと、風水の根底にある合理的な配置計画を取り入れ、言うならば間取りは法律と風水により殆ど自動的に決められていってよく、その半ば必然的に決まっていった間取りを建築的にいかに具現化していくかという点にその作業は集中しました。
基本的に道路斜線、北側斜線、日影規制の制限目一杯の状態で、大きな塀で囲まれたゾーンを形成し、その内部に要求される諸室を展開していく構成となっています。ここではそのボリュームの囲い方、採光を確保しながらプライバシーも確保していくという開口の開け方、を面と面の組み合わせで解決しようと試みました。
左:上:二世帯住宅は入り口も分かれ、外部階段を使って2階にとに分かれます。外部階段は大きな円弧を描いたアルミパンチングメタルのパネルで目線を覆われています。
1階のリビングダイニングのスペースです。道路が北側なのでリビングは道路と反対側の隣地に面して開けます。とは言え、すぐに隣家があるためここでは高さ5mの塀で南側を囲い、建弊率50%で得られる空地を全て南側に持たせ、そこに引きを与えながらリビングの採光を確保しました。また42条2項道路側の面はガラスブロックで遮蔽し、採光だけを確保。
左:上:リビングの一面はガラスブロックの壁になります。このタイプは殆ど透明であるため「大きな開口」に近い感覚です。
右:下:振り返ってリビングルームの入り口を見た様子。入り口の壁は強化ガラスの間仕切りでそのまま天井にあたります。入り口の開き戸も天井目一杯の開口です。
左:上:前面道路に面した主寝室。主寝室の窓はこの様な「地窓」。またこれとは別に外階段側に開口を設けています。位置的に大きな開口が取りにくいなかでの設定です。
右:下:和室の天井は障子を使った光天井です。日中はハイサイドライトを通してこの様に障子面は明るく照らされ、夜間は天井内にある照明で室内をぼんやりと照らします。この住宅には和室は二部屋あります。いずれも4.5畳の小振りなサイズで押し入れ、床の間がない分簡単な造作材で「ささやかな」雰囲気を打ち出しています。
左:上:地下室内の和室。縦格子の背後に空調機と収納があります。その手前にある壁付け照明で「ワンポイント造作」の代用をしています。