MMP-C西新橋の都市型住宅2007年
JR新橋駅から山手線の内側、日比谷通りを挟んだ場所にあるこの場所は静かなオフィス街、平日も夕方からは住宅地並みに静寂さが漂う都心にあっては珍しい落ち着いたエリアです。一方丸の内、銀座、六本木にも近く、日常的に都心でのあらゆる利便性に応えた地域です。 その西新橋で2年後に都市公園として計画されている桜の名所としても知られる景勝の地を前に計画された住宅。必然的に都市型住宅。その都市型住宅の新しい試みとして全ての構造体をプレストレストコンクリート(以下、PC)で計画された300年住宅の建物の紹介です。
PCであるが故に可能となった「隣地境界ぎりぎり」の建て方。地上、地下の有効活用、短工期、等々、都心に於ける建築設計計画上の様々な問題点をカバーして行くべく企画されました。
また、特筆すべき点として、この住宅はハウスメーカーである三田ハウジング、PCメーカーのオリエンタル建設、雑誌Memo「男の部屋」によるコラボレーションとしての未来型住宅プロジェクトでもあります。フルPCによる建て売り住宅という前例のない商品をメディアを媒体にしながら、その製作工程、工事工程を打ち出し、多くの協賛企業のご協力を得て実行されました。
階段室を見上げた様子。この階段室は外部階段として存在します。段板は全てグレーチング。ささら桁は各階のスラブから持ち出す形でトラス状に構成、鋼材は全て丸棒12Φを溶接で組立て。全体の構成は極限まで「軽く」。その軽い階段の先端部分である「踊り場」は空中に置かれた形。
左:上:階段室を少し離れて水平に見た様子。トラス階段としての構成がよくわかる見え方です。同時に、この階段室を囲う形で存在する強化ガラスの外壁は各フロアにある鋼材により二辺支持で持たされます。その鋼材は最上階の鉄骨フレームよりタイロッドにより吊り下げ。その鉄骨フレームは本体PCより同じく吊り下げられ、鉄骨フレームにはガラスを乗せることにより、完全にガラスの箱と化した階段室になります。
右:下:階段部分をアップにした状態。
少し引いた位置からの建物全景。連続するリブによるPCで構成された建物とその外壁に沿うように存在感を出さない階段及び階段室の様子。都市型住宅としての一つの提案です。
西新橋の都市型住宅に於ける一つの要素、「鉄骨による透ける軽やかな階段」の紹介。まずはその踊り場先端部のディテール。 写真の様にこの階段の踊り場部分は鉄骨トラス階段として持ち出し、段板もグレーチングで出来ていて、真下を見るとそのまま透けて地下1階まで見下ろせる「浮いた感じ」の構成です。階段にかかる荷重を12Φの鋼材で分担、軽減しながら最も軽快なストラクチャーの構成と言えます。
日中に階段室を見上げた様子。フロアー毎のバー材を上空の鉄骨フレームからタイロッドを使って吊り下ろします。フロア毎のバー材で2辺支持された強化ガラスが階段室の外壁面を構成。またそのガラスはタイロッドと同一直線上に置かれているため垂直応力をそのまま伝え、ねじれを起こさずにシンプルな形で成立します。鉛直方向の荷重はすべて上空の鉄骨フレームに集約され、そのフレーム自体の交点を本体PCから支える形で吊り込まれます。
左:上:階段室を正面から見た様子。グレーチングの段板とささら桁と同じ材料で作られた手摺りがぞの僅かな影を壁面に落とします。
日中の全景。ブラインドを全て下ろした状態での撮影。コンクリート、ガラス、アルミといった素材を用いて最小限のミニマルな要素で構成されています。
建物正面の様子。各室は全てブラインドを下ろした状態での撮影。また階段室のガラス壁面を通して反対側、及び空がそのまま抜ける形で現れます。
左:上:階段室上部と本体カーテンウォール部のとりあい。階段室のガラスは本体の壁面に対して面で突っ張る形で置かれています。
この建物の主階段は外部階段として位置づけられています。基本的には住宅用エレベーターが据え付けられているため昇降はエレベーターを使われる、という前提で階段を外部階段としてトラス構造の軽量化されたシステムを採りました。またその階段を外部たらしめるため、階段室を囲むガラスに空隙を設け、その空隙部に上下に貫通するタイロッドで各階のフレームを上空から吊り込んでいます。
写真はその階段室の中から上空を見上げた様子。カタカナの「キの字型」の鉄骨フレームから各タイロッドが下方につり込まれます。
左:上:階段室の足下部分の様子。トラス階段はこの様な形で連続してそのまま吸い込まれる様に地下階へ入ります。
右:下:階段室を上方から見下ろした様子。踊り場の先端部分はどこにも触れていまいのがわかります。
左:上:階段室のガラス越に外を見た様子。外の様子がそのまま室内に取り込まれる様に階段及びそれを囲むガラスには存在感がありません。
右:下:鉄骨トラス階段がそのまま地下まで降りてきて着地する様子。正面ガラスの下端がほぼGLラインです。