MCY-C町屋の工場併用住宅2008年

MCY-C

荒川区町屋に於ける板金工場併設の住宅の計画です。

狭隘道路が網の目の様に巡る昭和の古くから残る下町の一画でその街並みに溶け込む様に営まれてきた木造の板金工場を建て替え計画です。古い下町の一画もここ数年はハウスメーカーの画一的な住宅に徐々に建て替わり道路も部分的に拡張され、そのぎこちなさと相まってカオス的な雰囲気を作りつつあるその地で親子3人で住む住居と板金工場を併設した建築計画が実行されました。

その板金工場という用途から1階部分は無柱の作業性のよい空間が求められ、同時にその前面道路から来る高さの制限内に納めるために床板(スラブ)の厚さが梁を含め最も薄肉で構成可能なRCフラットスラブによる構造を採用しました。設計途上では一時、木造による案もありましたが柱をなくそうとするとことによる梁成のアップが必要な天井高が確保しづらく、逆に柱を立てるにはその短いスパンが効率的でなく、両者を満足すべく最大公約数的な選択から構造は必然的にRC壁式で梁を使わない壁と床によるフラットスラブの構成へと収束していきました。

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コーナーの隅切り部分をその前面道路を挟んだ反対側から少し引いて見た様子。二枚のパネルをつき合わせることなく空隙を持たせる事で軽さが表現出来ればと考えました。

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同じくそのコーナー部分を前面道路と三叉路状に直行するもう一つの道路を隔てた位置から見下ろした様子。コーナー部分が隅部とならずにそのまま抜けていく気配を与えようとしたところ。

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前面道路の反対側から建物ファサードを見た様子。

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ここからは太陽が落ちてから室内の光で建物のかすかに照らし出す様子です。
この道路側のファサードは二枚の壁により構成され、その一枚とほぼ同サイズの空隙がこの建物を「家」として見せる唯一の仕掛けになります。

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北側道路正面から向かった様子。

この住宅は北側道路という高さの制限上は有利な土地でした。しかし一方で採光をこの北側の面からしか採ることが出来ないため、その北側面の窓は必然的に極力大きな開口部としました。ところがそれは一方でプライバシー上の問題をまともに生じさせてしうため、そのガラス面に沿ってシルエットシェードを落とし、外部と内部の狭間を柔らかく遮断しようと試みました。
その柔らかな境界が左右の固い壁に挟まれる様子。

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住宅部分の玄関もこの様な面による構成の隙間として構成されています。その隙間から室内の光が漏れる様子。