ITO-C大森の二世帯住宅1992年
東京,大森の環状7号線から少し奥に入ると交通量の比較的多い環状線から一転して車一台の通行がやっとといった狭い通りが連なります。その編み込まれていく様な細い通り3本に囲まれた形で敷地は存在します。
必然的に複雑な形状の敷地に対して長い面で狭い前面道路に接するため、設計では外に対してプライバシーを完全に守りつつ同時にその形態が道路に対して威圧的なものにならない様に、ここでは緩やかに湾曲した形態の壁を用いました。大きく壁に囲まれた内部は中庭として3世代の住居がそれぞれ向かい合う配置計画としました。
住戸は2つのゾーンから構成されます。1つは湾曲した壁のすぐ内側に展開する6人家族による比較的大所帯の住宅で、1階を家族の共有ゾーンとして居間、食堂、家事関係の諸室、客室等があり、壁のすぐ内側の吹き抜けを通して上部にあるスカイライトに接続します。吹き抜けはそのまま2階の個室ゾーンとも連なり、縦に細長い住居を中心から殆ど行き渡る形で構成されています。もう1棟は両親の住居で、以前からこの土地に長く住み続けていたためおのずと生活習慣が確立されその行動がそのまま平面計画として再構築され、同時に以前から100年住み続けた住居の材料を一部使用して建物としての再構築を果たしました。
この住宅の設計上の大きな特徴は前面の細い道路に面して円弧を描く閉鎖的な面と、一方で敷地内に向けた開放的な面が背中合わせに構成されている点です。 写真はその前者の円弧の端部。狐を描く壁は一部では成の大きな梁として解析されているため、場所によっては建物を貫通するかの様に配置されてます。
右:下:円弧状の壁面を半分覆う様な形で前面道路に面して垂直な壁を配置しています。その垂直な壁と円弧状の壁の空隙がこの住宅のアクセスになります。主玄関と日常的な勝手口。この2つの入り口をシンメトリーに置いています。
写真は主玄関側から勝手口を見返した様子。
左:上:主玄関はそのまま通り抜けると中庭に向かいます。同時にその軸線の直交する形で住宅本体とその離れとなる和室が置かれます。写真はその通り抜け中庭側を見た様子。
右:下:更に進んで中庭に出たところの様子。
メインアクセスから中庭に抜ける導線は円弧の中心に向かって斜めに置かれます。そのため中庭に向かっては視界が放射状に開かれ、一度くぐったトンネルから抜けた様な開放感を与えます。写真はその「トンネル」の出口を振り返った様子。
左:上: 斜めに配置された壁はその一部を開き、生活上の中庭となる細長い通路に続きます。
右:下:敷地内スペースに面した外壁面は西側に面します。西陽を遮りながら室内を明るくすべくこの様にスキンとしての外壁を設けました。