AZW-C高円寺の二世帯住宅2008年
杉並区高円寺の青梅街道から入ってすぐのところにある商業地域と住宅地がまさに入れ替わろうとしている閑静な住宅地のまさに入り口にあたる場所にこの敷地は位置します。 42条2項道路により通り全体がセットバックして一本のまっすぐな路になる課程のまばらに古い状態で残っている地形も点在すると言った「都会の路地」とでも呼べそうな細い道に面してそこを切り取るように窓のない外壁が現れます。
建築主は30年来この地に住まわれてきたためその土地に対する愛着も強く、生活そのものがこの高円寺に密着していました。一方で老朽化する既存建物はその構造的な不安だけでなく今後子世帯との二世帯住宅として展開していくためには無理も大きく、ここに建て替えを実行しました。唯一受け継ぐ要素はこれまで庭として大事にしてきた樹木の一部だけで、残りは全取替え、という前提でて完全分離型の二世帯の住宅として計画されました。
完全分離型の二世帯住宅とは言え、共用する部分は
- 玄関ポーチ
- 中庭
窓のない閉鎖的な壁を道路に対して向けそれをファサードとしているため、それはややもすると暴力的なまでの表情も伴います。そのファサードを構成する壁を矩形に配置し、意図的に空隙箇所を設け、そこが玄関ポーチとして道路面に開放されています。粗暴なエレメントとそのエレメントの隙間、そこに道路に対する「拒絶」と同時に「誘導」が表現されれば、とここでは考えました。
敷地の道路面に沿って建物のファサードを見上げた様子。奥の方の面と面の隙間部分が共有されるアプローチ部分として道路面に開放されます。またファサード全体に置ける道路面との境の部分は今後植栽で緩衝ゾーンを設ける予定。
左:上:矩形として配置された壁面をずらすことによって設けられたアプローチ。アプローチ上部は道路面に向けて開放された唯一の開口部です。
右:下:振り返って反対側からファサードを見返した様子。
アプローチ部分に正面から向かったところ。左右それぞれに玄関があります。正面の格子戸は中庭と続く扉になります。基本的には常時閉鎖され気配だけが格子戸を通してかすかにアプローチに漂う形になります。
建物全体を包み込む皮膜としての外壁から一枚内側の壁はその表面のテクスチャーを変えてます。皮膜を矩形のままラフに見せようと試み、逆にこのアプローチ部分からはテクスチャーが等身大のスケールに変わります。
左:上:格子戸を通して中庭をかいま見た様子。日中はこの様に逆光になるため格子のシルエットが強調されます。
右:下:格子戸は一本引き、二枚建ての引き戸になっています。写真はそれを引ききって中庭に向けて全開した状態。壁面の仕上げもアプローチ部分の仕上げがそのまま連続して中庭まで連続します。
共有する中庭に対しては全ての居室を開放的に配置してます。都心にあっては贅沢な空間をプライベートに楽しむために閉鎖された中で開放させるといったありかたをここでは目指しました。道路側に向けた窓のない壁面はそのまま直角に曲がり、建物全体を包み込む様にL型に配置され、皮膜の様に建物を包みます。その皮膜に包まれた中に等身大のエレメントが点在するという姿を試みました。
写真は中庭に対してL字型に構えた棟の一方の端部から反対側を見た様子。床面にはサーモウッドによる木製デッキが敷かれていますそれぞれの棟から張り出すデッキとデッキの隙間が先のアプローチから繋がる中庭への入り口部分と重なります。
反対側の棟から見た様子。子世帯のデッキの一部はそのデッキ面に対して垂直に同一素材を立ち上げそれが浴室の目隠しを併用します。
左:上:浴室前の目隠しルーバーを横から見た様子。
右:下:そのルーバーが地上に着地したところ。目線の正面はアプローチ部分と中庭を仕切る格子戸があります。視覚的にこのラインは一直線上に配置されています。
左:上:縦ルーバーを反対側の端部から見た様子。ルーバーは見付け寸法を細く、見込みを大きくとっているのでこの角度から見るとその向こう側が見えにくくなります。